ロビンさんのあぶないお仕事

 もうそろそろ時効だと思うので、一時期やってた「ヤクザなバイト」について語ろうと思う。
 専門学校当時、イベントバイトだけでは卒業制作の資金が足りなかったので、もうひとつバイトを探すことにした。タウンワークに掲載されていたときは「DTPの勉強ができる」とうたった普通のバイトに見えたが、フタをあけてみたら風俗などをメイン顧客にしたweb制作会社だった。実技試験をやらされたらさんざんで、こりゃ落ちたわとか思ってたらなぜか採用された。
 しかし仕事はDTPではなく、トレス絵係だった。最初のうちこそ「イラレとフォトショの練習ができる!」と喜んでいたが、世の中そう甘くはなかった。
 風俗とかキャバクラの求人広告が入ったポケットティッシュがある。あれにいれる絵を描く仕事なのだが、自分の絵柄じゃなくて流行のモバゲーの絵柄を丸ごとトレスするのである。キャバクラなんてのは、しょっちゅう潰したりまた開店したりしているわけで、でもホームページや求人はいちいち作らないといけないので必ず需要があるわけである。とはいえ、横で「こことこことここは丸パクリにしてここは色違いにしましょう」みたいな会話聞いてると、地味に精神をやられる。
 で、三人くらい(ロビンのほかにもうひとりバイトがいる)で女の子を別々に描いて、元絵に似せれば自然とひとりが描いたような絵になるという理屈なのだが、そううまくいくわけがない。プロのアニメーターならまだしも、時給いくらの単なる学生である。しかも別にイラストレーターになりたいわけではない。自分の好きなことを仕事にすると嫌いになるからよくないというのは本当だな、と思った次第。
 基本は社員(ぽい人)がふたり。ひとりは上司っぽいおっさんでweb担当。禿げ散らかしたニートにしか見えなかったが一児の父なんだそうな。ロビン氏びびる。おかしをおごってくれたりして基本的には優しかったが、ボディタッチ系のセクハラをしてくる。ロビン氏イライラ。美人のねーちゃんにモミモミされたら嬉しいけど、おっさんにナデナデされたって嬉しくねーよ! その後別のバイトが決定し、辞意を出したらさらに優しくなる。しかしまあ父親が小遣いをやっている気分なのかもしれない。
 もうひとりはもさっとしたねーちゃんで、イラスト担当。こちらはトレス絵が非常に上手。線画はもちろん塗りまで完璧。もしかするとアニメーター崩れかなにかなのかもしれない。でも髪洗ってない臭いがする。人見知りっぽく、あまり話しかけてくれない。というか、ロビンはもしかすると嫌われてたのかもしれない。それにしても、描き進んでからだいぶあとになって「黒のところはリッチブラックじゃなくてk100にしてください、前作ってもらった奴もそうだったから作りなおしたんですけど」とか言われても困る。黒をリッチブラックにしてたのはロビンのミスだが、そのときに言ってくれないといつまでもわからないじゃないか。で、できたものが気に入らないとこれ見よがしにため息をついたり、「線がガタガタなのはなにか意図でもあるのか」と遠回しな嫌みを言ったり、めんどくさい。どうせポケットティッシュ大に縮小されるんだからそんなに細かくやらなくたって別にいーじゃねーか、と思っているのだが。そもそも人様の絵丸パクリして広告に使うということ自体あまり自慢できる仕事内容ではないのだから、いくら完璧にしたってむなしいだけである。というかどう考えても著作権アウトじゃん。もっとも、ロビンがイラストレーションをかじってて「オリジナリティを大事にしろ」という教えを受けたからカルチャーショックを受けているだけで、アニメーターなんかはみんなで絵柄をそろえないといけないから一概に言えないだろう。これからは作画崩壊しているアニメを見ても、優しい気持ちで見守ってあげたいと思う
 しかも丸ごとトレスというのが意外というか当然というか、実はとても難しい。線ならともかく、塗りまで再現するのはかなり難しい。元画像自体がかなり荒いし。特に髪。決して自分の塗り方に固執するわけではない(というか単なるベタ塗り)が、どうしてもただ見ただけでは真似できない部分がでてくる。で、やっとこさ完成した絵をダメだしされるのはまだいいが、「あなたの絵柄はいらないんです!」とか言われると「じゃあ元絵の絵師に最初から頼めよ!」と反論したくなる。しないけど。
 仕事内容もアレだが、環境もひどいものだった。まわりはキャバクラだらけ、ビルが古くてたまにトイレがつまる、異臭がする、排泄音丸聞こえ、タバコ吸う人が多く出入りするせいか知らないが近所で火事騒ぎ、掃除してもこれではあんまりである。
 そんなわけだから、学校の先生に紹介されて渋谷のデザイン事務所を訪ねて行ったときは、とても清潔で瀟洒だったので驚いた。周りはパルコやらNHKやら西武やらが並ぶオシャンティーな場所で、でかいマンションの一室を改造してあり、タバコ部屋も仕切られてるしトイレの音も聞こえない。なんだか十万円の商品を最初に見せれば一万円が安く感じられるみたいな話だが。そのあぶないバイトの話をしたら、同情されて雇われたらしい。結局そこも卒業までのバイトで、その後四月から別のところで正社員で就職したり、そのあと一ヶ月でクビになったり、そのあとさらに学校の紹介で今の会社に潜り込んだりしたわけだが、このときのバイトに比べると根掘り葉掘り聞いても怒られたりしないし、失敗してもため息つかれたりしないというだけで天国のように思える。あと、安易に変なバイトに飛びつくのは良くないなと思った次第。「なんでそんなバイトやってたの」とよく聞かれるが、タウンワークにのってた時は普通の求人広告だったんです
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by Robin96 | 2014-10-04 20:07 | 危険
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